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仮想通貨 賛成は誰?反対は誰?

先日(2021年5月27日)「米国の億万長者のカール・アイカーン氏が15億ドル(約1640億円)の仮想通貨投資の可能性」という記事を目にしました。カール・アイカーン氏と言えばトランプ元米大統領の特別顧問に起用されたことのある人物ですが、かつては仮想通貨に否定的な立場をとっていた方でした。

昨年からのビットコインの高騰を受け、過去に仮想通貨に対して批判的な意見を持っているとされる著名投資家達が、その否定的な意見を一転させています。米テスラ社のイーロン・マスクCEOなど、著名人による仮想通貨の支持表明が相次いでいます。では現在、誰が仮想通貨支持者で誰が不支持者なのかまとめてみました。

目次

ビットコイン否定スタンスを捨て支持にまわった人々

Carl Icahn(カール・アイカーン)

アイカーン・エンタープライズの創業者で、自己資本は約1.8兆円に上り、2021年フォーブス400の富豪ランキングで124位に位置しています。前米大統領のトランプ政権下では、規制改革特別顧問を務めていた人物です。

アイカーン氏は2018年ごろのインタビューでは仮想通貨に対して「バカげている」「(仮想通貨に)関わる気にはなりません。」と否定的な態度をとっていました。

しかし先日ブルームバーグとのインタビューで語ったところによると「現時点では仮想通貨を購入していないが、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など業界全体について理解を深めている」「アイカーン・エンタープライズとして、どのように関与するか検討段階にある」などと明かしたそうです。

いずれは10億ドルから15億ドル(約1090億円~1640億円)余りを投じる可能性があることを明らかにしました。

Howard Marks(ハワード・マークス)

資産運用企業オークツリー・キャピタルマネジメントの共同創始者で億万長者でもあるハワード・マークス氏。2017年のバブル期にはビットコインは本質的な価値を持たないと非常に否定的な見方をしていました。

しかし今年に入ってビットコイン価格が跳ね上がるにつれて否定的なスタンスを変えたそうです。2021年3月にCNBCとのインタビューで「無限に印刷できるドルとは異なり、より多くの人々がビットコインに関心をもっているため需要が高まっている」として、「現在のビットコイン価格が今のところ正しいように見える」とその価格の正当性を認める発言をしています。

マークス氏はまた、「ありがたいことに」息子が「ビットコインに非常に前向きであり、家族のためにかなりの額を所有している」と語っています。

Stanley Druckenmiller(スタンリー・ドラッケンミラー)

44億ドル(約4600億円)もの純資産を有する米国の著名投資家スタンリー・ドッケンミラー氏。以前まではビットコインに対して否定的な態度を示していましたが、現在はビットコインの「価値の保有手段としての可能性」を認め、金よりも優れている可能性がある資産クラスと呼んでいます。

ドラッケンミラー氏は2020年11月、ビットコインを所有していることを明らかにし、仮想通貨業界で大きな注目を集めました。Nugget’s News CEOアレックス・サンダースはこれを受けて「スタンリー・ドラッケンミラーの能力を考えると、これは市場最高のビットコイン支持ではないだろうか?」とツイートしたそうです。

Ray Dalio(レイ・ダリオ)

世界最大手ヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエーツ」の創業者で著名資産家レイ・ダリオ氏。2021年フォーブス400の富豪ランキングで88位に位置しています

過去には仮想通貨に対して懐疑的な見方を示していたダリオ氏ですが、昨年11月ごろからビットコイン対する理解を深めたいという姿勢を見せ始めていました。

そのレイ・ダリオ氏が、今年5月ビットコイン保有の事実を明かし、ビットコイン懐疑派としての立場を転換させました。インフレ防衛策としては債券よりもビットコインを選ぶとの考えも示しました。

ただ、ダリオ氏は他の投資家らと同様に、デジタル資産の価値を評価するのは困難だと言っています。ビットコインには投資家を「極めて裕福」にしたり「既存の金融システムを破壊する」潜在能力があるが、リスクもあると指摘。仮想通貨はハッキングされやすく、マネーサプライを管理したい政府の規制対象になりがちだと解説しました。

暗号資産支持者Elon Musk(イーロンマスク)

電気自動車企業テスラの共同創設者であり、宇宙開発企業スペースXの創設者・CEOのイーロン・マスク氏。2021年フォーブス400の富豪ランキング2位の富豪です。ツイッター上で様々な発言をしていることで知られ、マスク氏の言動が金融市場、特に仮想通貨市場に大きな影響を与えています。マスク氏の発言でビットコインとドージコインは一時高騰しましたが、最近の『環境負荷が大きい』発言から価格は下落に転じ、いまだ市場は回復できずにいます。マスク氏の行動の真の狙いはわかりませんが、仮想通貨支持の立場であることは間違いないようです。2021年のテスラ社とイーロン・マスクCEOの動向をまとめてみました。

2021年のテスラ社とイーロン・マスクCEOの動向

2021年1月29日 Twitterのハッシュタグに#ビットコインを突如追加。それを受けてBTCは15分で15%も暴騰した。
2021年2月1日 ビットコイン支持を表明。マスク氏がclubhouseでビットコインやドージコインに言及。ビットコイン支持を述べる。
2021年2月8日 テスラ社がビットコイン投資を発表。テスラの会計年次報告書で15億ドル(1600億円)相当のビットコインへの投資が明らかになる。テスラ車の決済でもビットコイン支払いを受け入れ予定とする。
2021年3月19日 ビットコインを「現金よりまし」「法定通貨の実質金利がマイナスの状況で、別の場所に目を向けようとしないのは愚か者だけだろう」とツイート。この後、ビットコインは5万5736ドルまで上値を伸ばし最高値を更新した。
2021年3月24日 ビットコインでテスラ車を購入できるようになったと発表。
2021年4月27日 テスラが21年1Qに保有するビットコインの一部を売却して2億7200万ドルの純利益を獲得。(売却は保有するBTC10%ほど)個人で所有するビットコインは売却していない。
2021年5月12日 マイニングによる環境問題への懸念からテスラがビットコイン決済を停止。仮想通貨市場全体が大暴落
2021年5月17日 テスラがビットコインを売却した可能性がツイッターでのやりとりで示唆され、またも仮想通貨市場が暴落。
2021年6月4日 ビットコインのロゴの横に二つに割れたハートマークを付けた謎のツイートが原因で小康状態を保っていたビットコインが約7%も値を下げ市場は再度混乱した。

マスク氏の発言が、仮想通貨市場全体の値動きに過大な影響を及ぼしている状況から、「ツイートをやめて車作りに専念してほしい」との声が上がっているそうです。

その他の著名人のスタンス

Bill Gates(ビル・ゲイツ)

否定的 → 中立的に(肯定的とまではいかないようです)

Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏は、2018年5月には「BTC投資は愚かな投資だ。私ならショートする」といった否定的な意見を語っていました。しかし今年2月CNBCの金融番組に出演した際に「私はビットコインを保有していないが、空売りもしていない。中立的な見方をしている」と語り、現在はその考え方に変化が見られています。

JPMorganのCEOであるジェイミー・ダイモン氏

米銀行大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、2017年には「仮想通貨ビットコインは詐欺であり、崩壊する」と強く批判し、ビットコインを取引した従業員は解雇すると警告していたほどでした。

しかし最近はビットコインについて、自身は依然として「支持者」ではないとしながらも、顧客の多くが投資を検討していることは認識していると述べ、トーンは和らいできています。JPモルガンは今夏にも、一部の顧客がアクティブ運用のビットコインファンドに投資できるようにする見通しです。また、ビットコインなどの仮想通貨の基礎になっているブロックチェーン技術には肯定的で、同社でも活用しているとも言及しました。

海外で仮想通貨を保有している企業

米マイクロストラテジー社

ビジネス向けデータ管理・分析を手掛ける会社で、上場企業として初めてビットコインを購入したことで話題になりました。

2020年8月に約2万5000ビットコインを2億5000万ドル(265億円)で購入してビットコインへの投資を開始。その際にCEOマイケル・セイラ―氏は「ビットコインは現金よりも価値が長期的に上昇する可能性が高く、魅力的な投資資産だ」と主張していました。以下がビットコイン投資履歴です。

  • 2021年2月8日の保有数は約72,000BTC、平均取得価格は16,109ドル。
  • 2021年3月1日追加購入を発表。保有数は約90,859BTC。平均取得価格は24,063ドル。
  • 2021年5月18日追加購入を発表。保有総額92,079BTC。平均取得単価は24,450ドル。

ビットコインの投資について、長期的に保有する方針であり、定期的な取引やヘッジ目的の取引、デリバティブ取引は計画していないと説明しています。

スクエア社

米ツイッターのJACK DORSEY(ジャック・ドーシー)CEOが率いる電子決済大手スクエア社は、2020年10月7日4709BTCを総額5000万ドル(約53億円)、平均取得単価10,617ドルで購入したと発表しました。その際、ドーシー氏は、「仮想通貨は経済力を強化する手段であり、グローバルな通貨システムに参加する方法を提供すると考えている」と述べています。

今年2月、ビットコインに1億7000万ドルを追加投資。また、同社は2021年6月5日、ビットコイン用ハードウェアウォレットの開発を検討していることを明かしました。

Paypalとマスターカード

米決済大手のPaypalが2020年秋、暗号資産の売買・管理を開始する方針を発表、その後2021年4月、仮想通貨で支払いができる仮想通貨決済サービスを開始しました。

マスターカードもまた、2021年後半には加盟店が客の仮想通貨での決済を行える機能を提供するということです。

米大手金融機関のスタンス変更と参入

米金融機関のスタンスが2021年2月頃から変わり始め、仮想通貨のなかで最も人気が高く時価総額も大きいビットコインへの投資に大手金融機関が相次いで参入を表明しています。

資産運用最大手ブラックロック社

およそ9兆ドル(990兆円)の顧客資産を運用する世界有数の機関投資家。ビットコインを始めたことを認めた。

モルガンスタンレー

アメリカ・ニューヨークに本拠を置く世界的な金融機関グループ。一部顧客のためにビットコイン購入し始めたことを発表。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロン

世界最大大手信託銀行。今年中にデジタル資産部門を設置する計画を明らかにした。

米銀最大手JPモルガン・チェース

富裕層顧客向けにビットコインのアクティブファンドを提供する計画を進めている。早ければ、今年の夏にも開始する可能性があるという。

金融大手ゴールドマン・サックス

廃止寸前だった仮想通貨取引デスクを復活させ、トレーディング事業に参入したことを明らかにした。ビットコインの取引や投資を進める計画を明らかにした

日本で仮想通貨を保有している上場企業

日本の上場企業で暗号資産を保有していると思われる企業16社が(株)クリプタクトより発表されています。暗号資産交換所を持つフィスコ、リミックスポイント、マネックスグループをはじめ、飲食業、不動産業、ゲーム業界などその他の企業でも保有されているようです。

保有企業16社

  • gumi(モバイルオンラインゲーム、スマホアプリの企画、開発)
  • コロプラ(オンラインゲームの開発・運営)
  • フィスコ(金融情報提供、傘下に暗号資産交換所「Zaif」
  • Eストアー (EC総合支援サービス展開)
  • ガーラ(欧米向けPCオンラインゲーム開発)
  • インヴァスト(インヴァスト証券の持ち株会社)
  • きちりHD(高級居酒屋「KICHIRI」を直営展開
  • アルデプロ (不動産会社)
  • ユナイテッド(ネット広告、プログラミング教育)
  • ネクスグループ(旧称本多エレクトロン株式会社)
  • ソフィアHD(デザインオートメーション事業
  • GMOメディア(GMO傘下、広告メディア運営)
  • モバイルファクトリー(スマホ向けのソーシャルゲームや着メロの開発・配信)
  • マネックスグループ(ネット証券大手。子会社に暗号資産交換所コインチェック)
  • リミックスポイント(暗号資産交換所ビットポイントを運営)
  • ネクソン(オンラインゲームの開発・配信。韓国のNXC Corporationの子会社)

 

仮想通貨に懐疑的・批判的なスタンスの人々

ウォーレン・バフェット(投資の神様と呼ばれるほど著名なアメリカの投資家)

世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEOを務めるバフェット氏。2021年フォーブス400の富豪ランキングで6位に位置しています。

バフェット氏はこれまでビットコインについて「殺鼠剤の2乗のようなもの」等とコメントしており(バークシャー・ハサウェイの副会長が2014年にビットコインを「殺鼠剤のようなもの」とコメントし、その後に価格が急上昇したのを受けて「2乗」と表現した)、自分は決して買わないと公言してきました。同氏は昨年、CNBCのインタビューに対し、「私は暗号資産を一切所有していないし、今後も所有することはないだろう」と述べています。

今年2月、同じくCNBCに対し、「暗号通貨は基本的に価値がない」「他の人に売る以外は何もできません」と従来の主張を繰り返し、「私は仮想通貨を所有していないし、今後も決して保有することはない」と仮想通貨を一貫して批判しました。

著名投資家Bill Ackman氏

米投資企業「Pershing Square Capital Management」のCEOで億万長者。「仮想通貨には投資しない」意向を示しました。2021年5月 Wall Street Journalのインタビューでも、「仮想通貨には本質的な価値がない」と主張。投資はしていないとしながらも、ブロックチェーン技術には関心を持ち、知識を広げていると語りました。

 

イングランド銀行(英中央銀行)のAndrew Bailey(アンドリュー・ベイリー)総裁

ECB(欧州中央銀行)Lagarde総裁

仮想通貨投資について「すべての資金を失う用意があるのなら買えばいい」と述べ強い警告を発しています。

仮想通貨に「内在する本質的な価値はない」と主張。各国金融関係者は仮想通貨がマネーロンダリングなどの犯罪用途に、使われることを懸念しておりガバナンス確立のため取り締まる方向性です。将来的にはCBDCやステーブルコインの活用は視野に入れた上で、インフラ設計を行なっていくという姿勢です。

黒田日銀総裁

日本銀行の黒田東彦総裁は5月27日に行われたインタビューで、ビットコインなど仮想通貨について「基本的に決済手段としてはほとんど利用されていない」などと否定的な見解を示しました。

仮想通貨取引の大半は投資や投機を目的としたものであり、足元では価格変動が非常に大きくなっていると指摘。「裏付け資産を持っていないため、値動きが激しく、基本的に決済手段としてはほとんど利用されていない」とも述べています。

一方、法定通貨である円や米ドルなどに価値を裏付けられているステーブルコインについては、仮想通貨とは「性格が異なる」としており、法整備や適切なガバナンスの必要性などの課題があるとしつつも、「将来、便利な決済手段になり得る」との見解を示しました。

米トランプ前大統領

先日6月7日、トランプ前大統領が「ビットコインは詐欺のようである」との見解を示しました。

トランプ氏は、大統領就任時から仮想通貨に対して否定的な立場でした。2019年には、ビットコインを初めとする仮想通貨とフェイスブックが開発を主導する「ディエム(旧リブラ)」にツイッターで言及し、「お金ではなく価格が不安定な上、資産価値の裏付けもないに等しい」と主張。規制面の問題や違法行為を助長する可能性に懸念を示し、米ドルだけが本物の通貨だと主張していました。

今回も、ビットコインを「米ドルと競合する通貨のようで好きになれない」と主張。ビットコインは米ドルやその重要性に影響を与える存在で、厳しく規制されるべきだと語りました。以前と同様に、米ドルが世界の通貨であるべきだと主張し、ビットコインに否定的な見方を示しています。

 

ビットコインに否定的な国

中国(規制を強化)

2021年5月18日、中国は銀行や決済会社が仮想通貨取引に関連するサービスを提供することを禁止し、また投資家に対しては、投機的な仮想通貨取引を禁止すると警告しました。加えて5月21日にはビットコインのマイニングや取引を取り締まる方針を発表しました。(保有自体は禁じていない。)

インド

2021年3月、インド政府が仮想通貨を禁止する法案を提案する方針を発表。暗闘資産の保有、発行、マイニング、取引、送金を犯罪行為とみなす厳しい対応でした。ところが、2021年5月19日、インド政府は暗号資産取引に対する姿勢を再考していると伝わりました。暗号資産規制委員会を立ち上げ、禁止から規制へと方向転換し、前向きな方向に向かう可能性が出てきたということです。

インドでは暗号資産について全面禁止にするのか、規制を設けて認可するのか、何度も二転三転してきた経緯があるので、今後の動向を見守りたいと思います。

トルコ、モロッコ

2021年4月、トルコ政府は暗号資産の決済利用を禁止を発表しました。決済利用は禁止したものの、同国民はインフレヘッジの一手段として、ビットコインを購入・保有することは引き続き可能だそです。

モロッコはすでに同様の禁止令を発令しています。

中米エルサルバドルがビットコインを法廷通貨に?

中米エルサルバドルの大統領がビットコインを法廷通貨とする法案を近く国会に提出すると表明しました。エルサルバドルは人口約640万人で、東京都の半分ほどの小さな国です。人口の70%が銀行口座を持たず、海外で働くエルサルバドル人からの送金が国内総生産の22%相当を占めています。ビットコインによって、こうした送金の仲介手数料を失わずに済み、低所得世帯が受け取る金額が増加すると述べました。

実現すれば世界初の事例となりますが、果たしてボラティリティの高いビットコインを本当に通貨にできるものでしょうか。いずれにしても今後の経過を見守りたいと思います。

まとめ

以上、仮想通貨を支持する人と支持しない人の意見を紹介しました。今年4月までの仮想通貨市場の高騰を受けた投資家の反応は2017年の仮想通貨市場はバブルの時とは明らかに違うということがお分かりいただけるかと思います。たとえ一部の人々が仮想通貨を嫌うとしても、仮想通貨が今後も存在していくことは明らかでしょう。今後市場が大きく拡大し、通貨としてだけではなく、今後の世界にとっても必要なテクノロジーとして発展していくことを期待したいと思います。