基礎知識

DeFi(ディファイ)とイールドファーミング

DeFiとは

Decentralized Financeの略でDeFi(ディーファイ又はディファイ)と呼びます。日本語では分散型金融システムと言われます。特定の管理者や運営主体は存在せず、ブロックチェーンのスマートコントラクトという技術を使ってあらかじめ作られたプラグラム上でユーザー同士取引ができるようになっています。

分散型と比較されるのが、中央集権型の現在の金融システムでCeFi (Centralized Finance)と呼ばれ、銀行や証券会社はもちろん、暗号資産取引所のコインチェックやビットフライヤーなども含まれます。

DeFiは次世代の金融サービスであり、暗号市産業界で今も成長を続けているホットな市場です。銀行や証券会社が行うような金融サービスをブロックチェーンを使ったプログラムで提供しています。

DeFi銘柄の価格の推移

DeFi銘柄は2020年の秋ごろから2020年5月上旬にかけて価格が大きく高騰しましたが、先日2021年5月中旬からのビットコイン価格の暴落に伴って、DeFi銘柄も価格大きく下げました。それ以降はビットコインの価格に連動するように上げ下げを繰り返しています。

下記のチャートはDeFi銘柄の時価総額の推移です。

DeFi銘柄の現在価格はコインゲッコーで確認できます。以下のホーム画面でホームタブ横のDeFiタブを押せば、以下のようにDeFi銘柄だけのリストになります。

DeFiが伸びている理由は?

それはずばり、DeFiに参加することでお金を増やすことができるからです。

具体的には、レンディングサービスやDEXなどのDeFiサービスに資産を貸し出し、金利や手数料収入を得る、イールドファーミングという運用モデルです。

では、どのようにお金を増やすことができるのか、Compound(コンパウンド)とUniswap(ユニスワップ)を例にとってみていきましょう。

現在のDefi人気の火付け役ともなったコンパウンド

コンパウンドはレンディングサービスを提供するDeFiです。数あるレンディングサービスの中でも世界でトップクラスの人気を誇り、運営開始から約3年安定運用されていてセキュリティ面も非常に高い評価を受けています。

レンディングというのは、暗号資産を借りる側から見れば、暗号通貨の融資を申し込める仕組みで、一定の利息を払うことを条件にコンパウンドから暗号通貨を借り入れることができます。返済期日が来たらスマートコントラクトによって元本や利息の支払いが自動的に実行されます。

反対に、暗号資産を貸す側(預ける側)からみるとコンパウンドを使って得られる収入は次のように2通りあります。

収入その1:インカムゲイン(利息収入)

コンパウンドに持っているコインを貸す(預ける)と貸した分の利息が受け取れます。この利息はそのコインを借りたユーザーが支払った金利から捻出されます。この利息を得る行為のことをイールドファーミングといいます。

イールドファーミングとはレンディングやDEX(分散型取引所)などのDeFiサービスに資産を貸し出すことによって流動性を提供する見返りに、利息を獲る(ファーミング:収穫、農業)行為のこと。

収入その2:キャピタルゲイン(コインの売却益)

コンパウンドは2020年6月、利用者に対してCOMPという新しいコインを配布すると発表しました。このCOMPは、本来はガバナンストークンで、株式の株のように運営に関しての決定に影響を与えることにできる投票機能がついているもので、値段がついていないものだったのですが、バイナンスなどの大手取引所がCOMPの取り扱いを開始したことで、どんどん価値がついていきました。最高値が849.61ドル(5/12/21)(約9万2000円)をつけたこともあります。COMPはコンパウンドに資金を預けるなどすれば無料で受け取れるものなので、このCOMPをもらうためにコンパウンドに資金を預ける人がいっきに増え、コンパウンドの預かり資金が急激に増えました。コンパウンドを使うと、利息をもらえる上に、COMPを売ってさらにキャピタルゲインを得られるということで、DeFiに興味をもつユーザーが増え、投資家の資金が波のようにDeFiへ流れ込んだという訳です。このように、利息の他にガバナンストークンを受け取ることを流動性マイニングといいます。

流動性マイニングとは、DeFiの流動性プールに自分が所有する暗号資産を提供し、そのスムーズな運営に貢献することによって利息の他に新規発行のトークンを報酬として受け取ること。仮想通貨界隈では特定の動作に対して報酬が得られる場合、それらを”〇〇マイニング”と呼ぶ慣習がある。

 

DEX(暗号資産の分散型取引所)

DEXとは?メリットとデメリット

次は暗号資産の分散型取引所であるDEX(デックス)を見ていきましょう。DEXとはDecentralized Exchangeの略でブロックチェーン上にある非中央集権型取引所のことです。従来の中央集権型取引所(例、コインチェックやビットフライヤーなど)はCeFi (Centralized Finance)と呼ばれます。

中央集権型取引所では、秘密鍵の管理を取引所に委任している形になっているため、取引所の倒産やハッキングなどにより資産を喪失してしまうリスクがあります。そのため、取引所で暗号資産を購入した後は自分のウォレットに移すことが推奨されています。

方、DEXでは中央管理者が存在していないため、自ら秘密鍵を管理しながら取引を行うことができます。ブロックチェーン上に存在しているためハッキングされる可能性は薄く、システムダウンや倒産の恐れもありません。より高い安全性を享受できます。

DEXのデメリットとしては、流動性及び利便性の低さでしょうか。多くの人が利用する中央集権型取引所は取引量が多く取引が成立しやすいですが、現状の分散型取引所は新興取引所であるために、売り注文や買い注文をする度に手数料がかかり、出来高が少ないために板も薄いことが多いです。また取引ペアの種類も限られてしまいます。

ただし、今後注目を集めていく事で出来高が増加し、取引対象通貨も増えていく可能性いです。

代表的なものにUniswapや1inch.exchenge、PancakeSwap、Ox Project, Kyber Networkなどがあります。

DEX例 ーUniswapについて詳しく見てみようー

ユニスワップは2018年11月にサービスを開始しました。イーサリアムとERC20トークン、またはERC20トークン同士を交換できる暗号資産の交換所です。コインチェックなどの中央集権型の取引所と違って特定の管理者がおらず、その交換作業をブロックチェーンのスマートコントラクトで行っています。個人の情報や資産を取引所に預けることなく、自分のウォレットを接続できればすぐにサービスを開始できます。

ユニスワップの中にはトークンごとの「プール」と言って、在庫保管庫のようなものがあります。もし、ETHをLINKトークンに交換したい場合は、ETHをETHのプールに入れてその時のレートで計算されたLINKをLINKのプールから受け取ることになります。この時、ETHの在庫の量とLINKの在庫の量によってレートは自動計算され、受け取ったLINKは直接自分のウォレットに入ります。

Uniswapを使った流動性マイニングで手数料収入を得る方法

先述したように、DEXでは取引の流動性を担保するため「プール」という仕組みを導入しています。流動性マイニングは、自分が持っているイーサリアム等のトークンをUniswapに在庫として貸し出し流動性を提供する見返りとして、そのスワップが行われるたびに交換手数料とガバナンストークンのUNIを報酬としてもらう仕組みです。このように流動性を提供する者は、流動性提供者(リクイティディ・プロバイダー)などと呼ばれます。ガバナンストークンのUNIも取引所で売り買いができ、2021年5月5日に高値43.40ドル(約4700円)を付けました。

流動性マイニングを行うためには以下の条件があります。

  • かならず2つのトークンをペアにして流動性を提供する必要がある。例えば、ETHとUSDTやETHとLINKなど。
  • 提供するトークンのペアは、それぞれのトークンの価値が同じでないといけない。例、ETHとUSDTのペアで預ける場合、1ETHと同じ額面のUSDTが必要。
  • 手数料はETHで払う必要があるので、必ずウォレットに手数料用のETHが必要。

 

その他の話題のイールドファーミング

Aave(アーヴェ)(LEND)

コンパウンドと同様のレンディングサービス。アーヴェとコンパウンドは競合関係にあり、取扱い銘柄や利息の利率が異なります。

アーヴェの独自通貨「LEND」はバイナンスでも取り扱われています。またイギリスの金融行動監視機構(FCA)から電子マネーライセンスを取得し、公的機関からも認められたDefi銘柄として市場でも注目を集めています。

PancakeSwap(パンケーキスワップ)(CAKE)

ユニスワップと同様のDEX(分散型取引所)です。

ユニスワップがイーサリアムブロックチェーン(ERC20)という規格のDEXなのに対してパンケーキスワップはバイナンススマートチェーン(BEP20)を採用しています。

使い方はユニスワップと似ています。大きな違いはバイナンススマートチェーンの取引手数料が非常に安いことで、イーサリアムの手数料高騰を背景に順調に利用者を伸ばしました。パンケーキスワップの独自トークンであるCAKEの価格もDeFi人気と共に高騰しました。

yearn.finance(ヤーンファイナンス)(YFI)

投資家から預かった仮想通貨を自動で運用する、ブロックチェーン上で投資信託のようなサービスを行う仮想通貨プロジェクトになります。投資家から預かった仮想通貨をヤーンファイナンスのプラットフォームが他のDeFiサービス(レンディングなど)に自動で投資を行い、高い利回りを追求します。発生した利益はユーザーへと配当と形で還元されます。

YFIは2020年7月にローンチされた、プラットフォームyearn.financeで用いられるユーティリティトークンです。取引開始時に32ドルだったYFIはたった1ヶ月で12,000ドルまで値上がり、32,000%も価格が上昇したことで知られています。発行上限が30,000YFIと非常に少なく、希少性がとても高いです。

 

その他のDeFiの種類

DeFiprime.comによると、2021年5月現在、DeFiのカテゴリーは、ステーブルコイン、暗号資産交換業者、デリバティブ、レンディング、支払い、保険、資産のトークン化、KYC&アイデンティティ、アセットマネジメント、ステーキングなど、18のサービスに分類されています。

その中のいくつかを簡単に紹介します。

分散型保険

DeFiではスマートコントラクトを使って保険の仕組みも非中央集権化、自動化させることができ、保険会社が不要となります。その代表格がNexus Mutual(ネクサス・ミューチュアル)です。ネクサス・ミューチュアルが主にカバーするのはハッキングによる金銭的な損害です。加入者からの被害申請があったとき保険金を支払うかどうかは専用トークン(NXM)の所有者による投資行動によって決められます。

分散型デリバティブ取引

分散型デリバティブ取引ができるDEXとして注目されているのが、Sythetix(シンセティックス)です。シンセティックスでは、外国為替、ダウ平均などのインデックス、原油、ゴールドなど多種多様な資産の値動きと連動する独自トークンSNXを発行しています。シンセティックスはアメリカのベンチャーキャピタルから12億円の資金提供を受けていることでも話題になりました。

分散型ペックコイン(ステーブルコイン)

ステーブルコインの代表的なものにテザーコイン(USDT)があります。相場の動きとは関係なく常に「1米ドル=1USDT」で交換できるように調整されています。その調整をしているのがテザー株式会社ですが、経営状態が不透明で「社内に発行済みテザーと同等の米ドルを常に準備している」という説明を疑う投資家からいくつも裁判がおこされたほどです。(和解済みのようです)そのような状況から、企業や国が関与せず、非中央集権・分散型で自動的にペック通貨(ステーブルコイン)を作る動きが加速しました。

MakerDAO(DAI)はイーサリアム(ETH)やベーシックアテンショントークン(BAT)などのアルトコインを担保にして、米ドルと価格が紐づいた独自トークンDAIの貸し出しを行うレンディングサービスです。DAIはステーブルコインのため価格が急騰することはありませんが、急騰を狙いながら他の通貨に投資ができる点から保有者も多くなっています。

DeFiのデメリット

このように金融の様々な未来が開けそうなDeFiですが、様々なメリットがある反面、次のようなデメリットもあることを認識しておきましょう。

問題があった時は自己責任

DeFiではハッキングが起きにくいですが、全くないという訳ではありません。日本の暗号資産取引所では、パスワードを忘れても再発行してもらえたり、法律で守られているためハッキングされてもある程度は資産が保証されたり等のサポートが受けられます。しかし分散型では管理者がいないので、仮にハッキングが起きても、間違った操作をして資産が消えてしまっても、返金を求めて問い合わせる場所はありません。

インパーマネントロス(変動損失)

UniwapやPancakeSwapなどDEXで「流動性の提供」をする場合、2つの通貨のペアを同額になるように提供することになっていますが、預け入れた2つの通貨の価格が変動することにより損失が発生してしまいます。2つの通貨の価格差が広がれば広がるほど損失がでるということです。例えば、2つの通貨の価格差が2倍になった場合(片方の通貨だけが2倍になった場合)は5.7%の損失、4倍になった場合は20.0%の損失ということです。対策として、価格の変動の少ない通貨同士を合わせる、価格変動の似ている通貨同士を合わせるなどを考慮した方がよいでしょう。Binance Academyに詳しい説明がありますのでご参照ください。

イーサリアム手数料の高騰

DeFiブームによりイーサリアム・ネットワークの利用度が激増したことで、手数料は急増しています。少額でイールドファーミングに参加すると、手数料負けしてしまい結果的に損になるリスクがあるため注意が必要です。