電気自動車テスラ社のイーロン・マスクCEO が今年3月にビットコインを使ってテスラ車を購入できるようになったと発表したのもつかの間、先日ビットコイン決済を停止すると発表しました。この影響でビットコイン含む仮想通貨市場は10%を超える下落となりました。
ビットコイン決済を停止する理由に、ビットコインのマイニングにおける電気消費量を問題視しています。特に石炭の使用の増加が環境に与える悪影響を懸念しているようですね。
確かに、これまでもビットコインの承認方法であるプルーフ・オブ・ワークはその膨大な電力消費が問題視されてきました。(でもこの問題は3月にはもうすでにわかっていたことなので、今回のビットコイン決済中止の背景には何か別の意図があるのでしょうか?不思議ですね。)
そこで、今回はビットコインのマイニング方法であるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とイーサリアム2.0へのアップデートでもの取り入れらたプルー・オブ・ステーク(PoS)について比べてみたいと思います。
承認方法の基礎知識
仮想通貨の承認の方式をコンセンサスアルゴリズムと言います。
管理者がいない非中央主権的な仮想通貨のブロックチェーンを健全に保つために、ネットワーク内の誰かが正当な取引の承認を行う必要があります。このデータ承認の作業のことをマイニングと言い、作業を行う人をマイナーと呼びます。マイナーによるマイニングによってデータの正しさについての合意=コンセンサスを得る仕組みなので、「コンセンサスアルゴリズム」と言われます。
承認の方法にはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)、ネムで採用されているプルーフ・オブ・インポータンス(PoI)、リップルで採用されているプルーフ・オブ・コンセンサス(PoC)など何種類かあります。
コンセンサスアルゴリズムとは言ってしまえば、「ブロックを生成する権利を誰に与えるか」を決めるためのルールと言えます。
プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)とは?
採用通貨例 ビットコイン、ビットコインキャッシュ、ライトコインなど
Proof of Workを直訳すると「仕事の証明」ですが、ようは一定の仕事をしたことの証明書です。ビットコインなど多くの仮想通貨で採用されていて、作業量に応じて報酬を渡す確率を上げるという考え方です。
例えば、あなたがビットコインを送金したとき、そのデータは他の人によって承認されることで初めてブロックチェーンにつながれます。この承認作業とは暗号通貨を使った取引の情報以外にもデータをブロックチェーンに繋ぐのに適した値をコンピュータで計算して発見しなければなりません。そして、一番初めに正解を出したマイナーがご褒美として決められた量のビットコインを手に入れることができるという訳です。一方、権利が与えられなかったマイナーは、そのブロックの正当性を確認します。ブロック生成者とチェック者を分けることによって、安全性を保つことができます。
PoWのメリット
メリットは取引の改ざんが極めて難しいことです。これはマイニングの報酬を受け取るメリット方がデータを改ざんするメリットを上回るように設計されているためです。
PoWの3つデメリット
- 承認までに時間がかかること。
- PoWは作業量、つまり計算量が豊富なコンピュータを保有するマイナーに対して報酬を渡す確率を上げるという考え方なのでどうしてもコンピュータの計算競争となります。そしてマイナーの競争が激化するにつれて、マイニングによる膨大な電力消費が問題視されるようになってきました。マイナーは少しでも計算の能力の高いマシンを手に入れようと設備に投資するようになり、巨額の資金をもつ組織だけがマイニングの報酬を手に入れるようになります。これではマイナーが寡占化するのではと危惧されています。
- 51%攻撃のリスク。これは、全マイナーの総計算能力のうち、51%以上を有する悪意あるマイナーがいたとすると、本来は間違っているはずのブロックを正当なものをみなしたり、正しいはずのブロックを正当なものとみなしたりすることができてしまうということです。しかし、51%攻撃を行うためにかかる費用と得られる収入では、費用のほうが圧倒的に多くなりやすいため、経済的なインセンティブによる51%攻撃が起こる可能性は低いと考えられます。
プルーフ・オブ・ステークとは
採用通貨 イーサリアム(2.0へのアップグレードでPoWからPoSへ)、テゾス
プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)を直訳すると「掛け金の証明」ですが、ようは「資産保有による証明」ということです。つまり、通貨保有量が多いコンピュータに優先的に承認する権利が与えるということです。
ビットコインのマイニングに変わる新しい方法で、プルーフオブワーク(PoW)よりも51%問題に強く、資産の量での勝負になるため承認作業にかかる電気量も少なくて済むと言われています。参入のための大掛かりな設備が必要ないのでマイナーによる寡占化状態も防ぐことができます。PoWの3つの問題がすべて解決できますね。
ただしPoSには、資産の量が多い人ほど報酬(新しく発行される仮想通貨)を得やすくなるため資産の偏りが起き、また長期間にわたって保有していた方が有利なので、短期間で売却しようと考える保有者が少なくなり、結果として資産の流動性がなくなってしまうというデメリットもあるようです。
まとめ
今回はテスラ社の記事から問題視されたプルーフ・オブ・ワークがどういうものが、どんな問題があるのか、PoWの問題点を改善したPoSがどんなものかを記事にしてみました。これからはPoWよりもPoSのほうが主流となっていくのかもしれませんね。