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テゾスとは? -価格上昇の理由-

最近テゾスの価格が上昇しています。2021年7月20日に$2.09の安値を付けた後、9月14日に$8の高値を付けています。現在は$6台に落ち着いていますが、テゾスとは一体どんなトークンなのか、またなぜ価格の上昇したのか、その理由を探ってみたいと思います。

Tezos/XTZ(テゾス)の基本情報

項目名称/通貨単位 Tezos (テゾス)/ XTZ
発行上限 100億XTZ
コンセンサスアルゴリズム Liquid Proof of Stake (LPoS
公開日 2017年7月1日
提唱者 Arthur Breitmen
Kathleen Breitmen
公式サイト https://tezos.com/
公式Twitter https://twitter.com/tezos
ホワイトペーパーURL https://www.tezos.com/static/papers/white_paper.pdf

 

テゾスはイーサリアムと同じ分散型アプリケーションのプラットフォーム

テゾスはイーサリアムと同じ分散型アプリケーションのプラットフォームで、スマートコントラクト機能を持ち、Dapps開発用プラットフォームとしてDefiやNFTに利用されていくと思われます。

テゾスはアーサー・ブライトマンとキャサリン・ブライトマン夫妻によって開始されたプロジェクトです。キャサリン・ブライトマンはコーネル大学を卒業後、ウォールストリートジャーナルやアクセンチュアといった企業で活躍、その後は分散台帳技術開発を行う企業であるR3にて戦略に関する役職についていました。またアーサー・ブライトマンはフランス出身の技術者でゴールドマンサックスやGoogleの次世代技術開発プロジェクトGoogle X(現・X)でキャリアを積んでいました。(↓ご夫妻)

tezos.jpg (450×294)テゾス・プロジェクトは2014年頃からスタートしていますが、その頃すでに運用されていたビットコインやイーサリアムなどの通貨は、急速に成長したために、拡大した需要や問題点の対応に追われていました。スケーラビリティに起因する取引承認の遅れやハードフォークといった問題点などが挙げられます。テゾスはそんなスケーラビリティやハードフォーの問題点を解決することを目的として開発された仮想通貨です。

独自のスマートコントラクト「OCaml」を採用した仮想通貨

テゾスでもイーサリアム同様にスマートコントラクトの機能があります。

スマートコントラクトとは?

ブロックチェーン上で契約を自動的に履行できます。契約にかかる時間とコストを削減できるというメリットがある一方で、自動でなされた契約にエラーやバグがあっても、ブロックチェーンの性質上、それらを後から修正することが難しいというデメリットも抱えています。

エラーの許されない契約などにおいては、スマートコントラクトが正しく実行されているかを証明する必要があります。

そこでテゾスでは「OCaml」という検証に適した関数型プログラミング言語を採用し、「Formal Verification(形式検証)」を導入しました。「Ocaml」は東京大学での技術先研究でも用いられるプログラミング言語で不具合やバグが生じにくいという利点があります。「形式検証」とは、プログラムの設計・検証工程においての正しさを、数学的理論を用いて解析・証明することで、そのセキュリティを向上させる手法です。テゾスはこれら2つの機能から、スマートコントラクトが正しく実行されているかを数学的に検証・証明することが可能となり、より安心して使えるようにしました。

カルダノでは同じ理由からスマートコントラクトにHaskellというやはり関数型言語を採用していますね。

 

ハードフォークが発生しない自己アップデート型仮想通貨

仮想通貨が大規模なシステムアップデートを行う時には通常ハードフォークが行われます。しかし、このハードフォークはブロックチェーンが分岐するというデメリットがあります。

開発者間で合意が取れているハードフォークアップデートを実施する時はフォーク後に片方のブロックチェーンを無効にすることによって分裂を防ぎますが、マイナーが賛成しない等、さまざまな事情によって両方のブロックチェーンが存続する場合があり、こうなると仮想通貨が2つに分裂します。通貨の分裂は分岐元の通貨の価値を下げたり、ハードフォークの前後で価格が乱高下するという可能性も出てきます。また通貨の信頼性に疑問が浮上する原因にもなるのでなるべくなら避けたいことです。

例えばビットコインでは取引が多くなると送金詰まりが起きてしまうという、スケーラビリティの問題があり、その解決のため2017年にハードフォークを実施しました。そしてその際にビットコインキャッシュが誕生してしまいました。

一方、テゾスはシステムアップデートを行うためにハードフォークする必要がないブロックチェーンです。ハードフォークに対応するためにプロトコルを、ネットワーク、トランザクション、コンセンサスの3つに分割して作っています。それぞれのプロトコルを独立させて形成することでアップデートしてもブロックチェーンが分裂せず、互換性を持たせるようにしています。ハードフォークにより仮想通貨が分裂しないので、通貨の価値の安定を保ち、信頼できる仮想通貨となります。

プロトコルとは?

コンピュータ同士が通信をする際に定められた規定のこと

 

LPoSを採用しておりステーキングサービスが利用できる

テゾスでは取引承認作業のためのコンセンサスアルゴリズムにLiquid Proof of Stake(リキッド・プルーフ・オブ・ステーク)が採用されています。プルーフ・オブ・ステークがベースとなっていて通貨の保有量が多い人が取引承認作業を成功させやすい仕組みですが、LPosでは通貨の保有量が少ない人が保有量の多い人に投票の権利を委任することができます。その結果、より多くの人がブロック生成に関われるので従来のPoSより取引承認や送金が早く済むと期待されます。

多くのProof-of-Stakeでは、技術的な理由からバリデーターの数が制限される事が多いですが、テゾスのLPoSでは、数万以上のバリデーター規模でも動作する事が期待されており、また全てのステークホルダーが合意プロセスに参加できるため、より分権的であると言えます。

テゾスでは、ブロック生成のことを「ベーキング」と呼んでいます。(ビットコインなど他の通貨では「マイニング」と呼んでいます。)そして生成者のことをBaker(ベイカー)と呼んでいます。

 

ステーキングにおけるデリゲート(委任)とは?

先述のようにテゾスはステーキングが可能です。自分の所有するXTZでベーキングする権利を他人に委任することができ、間接的にブロック生成に関与して報酬を受け取ることができます。委任においては、テゾスの所有権は譲渡されず、ベーキングの権利のみをベイカーに委任するため安全にステーキングに参加することができます。

ステーキング方法

1 自分のウォレットからステーキングする。Ledgernano S, Ledgernano X, Trust Wallet, Exdous, TezBox, Atomic Wallet等のウォレットがステーキングに対応しています。ロック期間はなくいつでも売却が可能です。

2.GMOコインのステーキング・サービスを利用する。GMOコインに預けいれるだけです。とても簡単。毎月10日に最短翌々月から報酬が支払われます。年率3~6%程度と説明されています。

3.バイナンスやコインベースなどの海外取引所のステーキング・サービスを利用する。コインベースは少額の手数料が発生します。バイナンスは利率が高いです。

*国内でも海外でも取引所でのステーキングは、ユーザーがウォレットの秘密鍵を管理できないため、ハッキングや凍結、倒産リスクがないわけでありません。そのようなリスクも考えて利用しましょう。

 

Tezos(テゾス/XTZ)の購入できる取引所

日本国内ではbitFlyerとGMOコインで取扱いがあります。両社とも販売所での取引となります。販売所ですので、両社とも多少のスプレッドがあります。

取引所で購入したい方は海外取引所利用することになります。CoinMarketCapによると2021年9月現在、取引高の多いのはBinance, Coinbase, Huobi Globalとなっています。

テゾスの将来性と価格上昇の理由とは?

テゾスはフランスの中央銀行での実証実験に採用されている

2020年9月からテゾスのブロックチェーン技術は、フランスの中央銀行デジタル通貨「CBDC」の実証実験に採用されています。実験の目的は、CBDCで銀行決済を実現できるかどうかの検証です。まだ結果は出ていませんが公共の機関である中央銀行に正式にその技術が採用されれば、テゾスの地位や価格にも大きな影響を与えることになるでしょう。

今年3回目のアップグレード「Granada」

テゾスはこれまで7回のネットワークアップグレードを成功させています。今年(2021年)だけでも3回もアップグレードされ、直近のアップグレード「Granada(グラナダ)」が2021年8月6日に行われました。グラナダではブロック時間が60秒から30秒に半分に短縮されました。さらにネットワーク上に展開されたスマートコントラクトをより効率的にし、ガス消費量を現在の料金の3~6倍削減しました。ネットワークは急速な成長をとげており、より多くの組織がテゾスでの開発を選択するにつれて、スマートコントラクトアクティビティが増加しています。

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NFT市場にも参入

2021年5月テゾスがF1チームであるRed Bull Racing Hondaの公式ブロックチェーンパートナーとなりテゾス・ブロックチェーン上でチーム初のデジタルコレクションNFTを発売しました。さらに最近、ライバルチームのMcLaren Racingとの技術提携も発表しました。両チームはネットワークの二酸化炭素排出量が少ないためテゾスを選択したと述べています。

大手金融機関によるテゾス実用化に関するプロジェクトが進行中

2021年8月24日、スイスの仮想通貨関連企業3社、Crypto Finance AG、InCore Bank、およびInactaがテゾスの基盤技術を利用し、テゾスブロックチェーンで金融商品を機関投資家向けに提供すると発表しました。InCore Bankはまた、機関投資家向けにXTZのステーキングおよび取引サービスも提供します。トークン化関連の金融商品のローンチはこれからですが、まずはエクイティ分野からトークン化を始めるということです。

(参考記事)スイスの仮想通貨関連企業3社、テゾスチェーンで金融資産トークン化へ (coinpost.jp)

ステーキングを利用する長期保有者も多い

StakingRewardsのデータによると2021年8月現在でTotalSupplyの77.65%がステーキングされています。ステーキング目的の投資家は基本的にテゾスを長期に保有したり積み立てたりするため、その分市場供給量(limits the number of tokens available on the marketが)減り、テゾスの価格の下支えにもつながります。

まとめ

今年、テゾスのネットワークアクティビティは1200%増加し、活発なコミュニティがエコシステム全体で多数のマーケットプレイスやアプリをローンチしています。とは言え、まだ実証実験中や小規模なテスト的な取り組みも多くあります。本格的な実用化はこれからという所です。今後、テゾスの仕組みや技術がどれくらい実用化されるのか、実用化に関するプロジェクトの進行状況に注視しておくと良いでしょう。

しかしテゾスには、DeFiやNFTの開発者が要求する複雑さに対応できる、技術的にも優れたスマートコントラクトとトークンの規格があります。ステーキングもできますので、短期トレードではなく長期的な視野で投資されることをお勧めします。